「丸太町ルヴォワール」 円居挽


丸太町ルヴォワール (講談社BOX)

丸太町ルヴォワール (講談社BOX)

 

   「ウチらの使う技の一つ一つはもうありふれてて、誰でも知ってるもんや。せやけど、お客さんに見たい夢を見せるのは技じゃなくて腕や」

 

内容

かけられた殺人の疑惑と、消えた初恋の女。真相を巡って、京都の裁判めいた祭事で繰り広げられる議論の応酬。
 

妄想

「読み終えたくない」と思えるミステリはとても希少で、とても素晴らしい。
大抵の推理小説を読んでるときってのは、「まだ100ページもあんのか」というか、さっさと最後の真相を知りたくてページを繰る速度も上がるってもんですけど、本書は違う。残りのページが少なくなっていくのが本当に惜しい。もうこのミステリ時空に俺を置いていってくれよと思うけど、先を読むことは止めらんなくて今しがた一気に読み終えた。
読者を全力で楽しませようという気概と、自分にはその能力があるという自負があって。ついでに、矛盾してる言い方だけれど、この上ない作品であるのに無限の伸びしろを感じる。これで新人とか脱帽ですよほんと。
そして特筆すべきは、ミステリ愛とミステリ筆力の高さ。
ロジックとか誘導とか目眩ましとかそれ伏線かよとか予想外の不意打ちとかありふれたトリックの使い方とかどんでん返しとか、実に豪華で満腹。
「ミステリって面白いだろ?」という作品であり、「最高です」と返す他ない傑作でした。