- 作者: 神林長平
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: 文庫
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「われらは、おまえたちを創った。
では、おまえたちは、なにを創るのか?」
キカイ系SF
内容
「あなたの魂に安らぎあれ (ハヤカワ文庫JA)」、「帝王の殻 (ハヤカワ文庫JA)」に続く火星三部作完結篇人造人間が、人間同士の争いに巻き込まれながら、自分探しをする話。
ついでに地球も救う。
笠井潔による17ページにわたる解説つき
感想
三部作の第一作であり、著者の初長編でもある「あな魂」も素晴らしい作品でしたが、それから二十年、筆力は衰えるどころかすでに完成の域に達しています
まさしく、大傑作。
「ピノキオは人間になって本当に幸せだったのか」というのはキカイダーですが、
そんな悩みはさっさと捨てて、主人公のアンドロイドはアンドロイドとしての生き方を模索します。
それは、被創造物から創造者になること。
神林長平がもっとも重視している「創造」というテーマです。
これが、想像以上に重いのですが、読みにくさも分かりにくさもほとんどありません。
上下合わせて1200ページ、実に幸せな時間を過ごすことができました。
関連書籍
刊行順は、「あな魂」→「帝王」→「膚」ですが、時系列は、「膚」→「帝王」→「あな魂」。しかし「膚」での「あな魂」のネタバレはわりと致命的な感じなので、刊行順に読むのがベストかと。
妄想
神林文学を、「キカイ系」と呼ぶのはどうか。セカイ系に対抗して、キミとボクではなく、キカイとボクだ。「戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)」「魂の駆動体 (ハヤカワ文庫JA)」やらが筆頭になる。まあ、神林長平以外に書き手がいないのだが。SFが読みたい! 2004で2位。これが2位!? 1位はどいつだよ、と思ったら飛浩隆「象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA)」か……これは相手が悪い。ガラスの彫刻と自動車、どちらが上かと聞くようなものだ。綺麗さ、繊細さでは前者、重厚さ、力強さでは後者。まあどちらも極めて精巧なのだが、芸術品としては分が悪いような気もする。仕方が無いか。
解説の笠井潔、この三部作を「時代」にからめて語るあたりはさすがである。ミステリーズに載せた物の改稿らしいが、なんでミステリーズでこんなハードSFを語ってしまうのか。「あな魂」「帝王」のネタバレも当然のようにある。しかしそれにしても、その、なんだ、……頑張って原稿用紙を埋めようとしてないか? これ。
下p469 彗慈は誤字。